型枠の種類や工事の流れについて

前回の記事では、型枠大工のことについてサラッとした流れで紹介しました。今回はもう少し細かく記事にしていきたいと思います。


ほぼ全ての建設工事に必要となる型枠工事

前回もサラッとご説明した通り、型枠工事は躯体工事の一工程であり鉄筋コンクリート造などの建築で使われる工事です。まず鉄筋や鉄骨を加工して組み合わせ、建物の骨格部分を造ります。次にこの骨格部分を囲むように合板を加工し製作した型枠を組みあげ、そこにコンクリートを流し込むと建物の土台となる躯体が出来上がります。高い建物の場合はこの作業を2階3階・・・と繰り返すことで建物全体の躯体が出来上がるのです。

コンクリート造の建物以外でも、木造家屋の基礎部分はだいたい同じ工程で作られます。

このように、ほぼすべての建築物で、型枠工事は行われています。



型枠工事の流れ

型枠工事は、現場で型枠を組む建てるほかにも大事な工程が沢山あります。


1.拾い出し

拾い出しとは、施工図をもとに、柱・梁・床・壁などの形状や寸法を割り出し、どこにどのような型枠が何枚必要かを求めていく作業です。

ここで間違えてしまうと、現場で組み立てた際に図面通りにうまく収まらなくなってしまいます。拾いだした型枠の形状や寸法は加工図という図面に起こし、必要な枠のサイズ、資材の量などを明確にします。

施工図上の数字はあくまで仕上がりの数字で型枠工事で必要な数字は、それらの数字とは違ってくるので、特に慣れが必要な工程になります。


2.型枠加工


型枠加工とは、拾い出しで作成した加工図をもとに必要な型枠を作成する事です。型枠は合板に桟木(さんぎ)と呼ばれる角材を釘打ちして作ります。ここで使う合板は基本的には流し込んだコンクリートが固まってから型枠を解体する際に、はがしやすいように片面が滑らかな塗装仕上げになっているものを使います。建物によって壁や階段部分の寸法に合わせて色々なサイズの型枠を作ります。型枠は何度か使い回しをするケースがありますので、型枠を使用した後には表面にこびりついたコンクリート片などをきれいにしておきます。

この加工作業は基本的には現場とは違う別の場所で行い、現場には加工済みの型枠を搬入しますが、現場によっては加工しながら組み立てるという場合もあります。そして狭小住宅など狭い場所では、再利用しない捨て型枠を使う事もあります。

※型枠加工では丸ノコや釘打ち機などの器具を使います。

注意しないと怪我をする恐れがあります。

慣れないうちはゆっくりと慎重に作業を進めましょう!


3.墨出し


ここからは現場での作業。

墨出しは型枠を建てるべきところに専用の道具を使って線や印を付けていくことです。最初に基準となる線を引きそこから各部に線や印を付けていきます。最初にほんの数ミリでもずれがあると最終的に大きなずれとなってしまい、そのせいで各所の寸法に狂いが出てしまいますので、決して気を抜いてはいけない作業です。

墨出しが済んだら、その線に沿って桟木を床に打ち付けていきます。

これが型枠を建てるための印となり次の工程に進みます。


4.型枠の建て込み


墨に合わせて型枠を組み立てていきます。

型枠の建て込みの精度が建物の出来栄えを大きく左右します。

型枠を据え付ける部分が水平になっていない場合も多くあるので、まずしっかりと水平になっているか確認し、なっていなければベニヤ板などを打ち付け水平にしていき、ようやく型枠の建て込みが出来ます。

型枠を建てたら次は締付という型枠をしっかりと固定する作業をしていきます。型枠を建てただけでは、コンクリートを流し込んだ際に圧力で倒れてしまったり枠の隙間からコンクリートが漏れ出てしまったりしてしまうので、セパレーターやターンバックルといった補助金物で型枠を固めていくのです。

他にも固めの作業では様々な金物を使います。


5.コンクリート打設


枠が固まったら、コンクリートを流し込んでいきます。

一般的にコンクリート打設は型枠工事会社ではなく圧送屋さんが行います。

型枠大工はこの打設に立ち会い、打設している型枠施工部分に不具合がないかをしっかりとチェックします。不具合があった時には、補助金物を追加したり固めをきつくしたりと迅速に対応していかなければなりません。

6.型枠の解体

型枠工事最後の工程は、型枠の解体作業です。

型枠は、施工後は当然のことながらコンクリートから外さなくてななりません。よく解体と聞くと、簡単にできそうなイメージを持たれるかもしれませんが、型枠の解体には順序があり、それを守らないと型枠が崩れ、大きな事故につながることもあります。そして、型枠を転用する場合には、型枠を壊さないように丁寧に外していかなければなりませんので、気を抜けません。


これら1~6のすべての工程を経て、型枠工事は完結します。



型枠の種類

型枠にはいろんな種類があります。ここではその種類を3つ紹介します。


1.化粧打ち放し型枠

化粧打ち放しとは、コンクリートが固まってから枠を外した後、その表面にタイルを貼ったり塗装したりせずに、そのままの状態で仕上がりとする方法のことです。この方法の際に使用する型枠を化粧打ち放し型枠と言います。

弊社では地域柄?化粧打ち放しの事を【打ちっ放し】と言っています。

一般的に化粧打ち放しの魅力は型枠の継ぎ目と、コンクリートのツルっとした質感によるものですが、あらかじめ型枠の表面に様々な模様を施しておくことで仕上がりのコンクリートの表面にいろいろな表情をつけることも可能です。

街中でたまに見かけるのが、石を組んだような模様や木材の木目模様、波の模様のコンクリートはこの化粧打ち放し型枠を使って表現します。

木目模様を付ける際には[杉板本実(ほんざね)型枠コンクリート工法]という工法がありますが、それはまた別の機会にご説明させていただきますね。

このように、これらの型枠をうまく使うと、無機質で冷たい感じの印象がするコンクリートでも、柔らかくおしゃれな印象にできます。


2.システム型枠

システム型枠とは、同じ形で何度も繰り返し使用(転用)出来る型枠のことです。一般的な建造物はその根幹となる柱や梁など、構造上重要な部分は特殊な形状の型枠が必要になることは、ほぼありません。

これらの部分のようにわざわざ変更する必要のないところでは以前使った型枠を再利用して工事を行うことがあります。このような工事の際に型枠をユニット化し、短時間で組み立てられるように工夫されたのがシステム型枠です。

このシステム型枠は、大規模な建物や擁壁、道路の橋脚などでよく使われます。

システム型枠は、ユニット化したパネルを、付属するプラスチック部品でつなぐだけで大きな型枠パネルが形成されるため建込(現場で型枠を組み立てる事)も解体(コンクリートが固まった後型枠を外すこと)も短時間ででき、作業効率を格段に向上できるうえ、作業の省力化や工期の短縮、同一形状で転用回数を増やすことによる大幅なコストダウンにもつながります。今の時代、どの業界でもコストカットは必須となっています。


3.特殊形状の型枠

特殊形状の型枠とは、複雑な形状の建物に使用される型枠で、幅広い形に対応できます。入り組んだ形状の物や曲面がある建物…例えば屋内外の音楽ホール・大きな公園の建造物・コンクリートで製作するオブジェなど高いデザイン性が求められるものは直線だけでなく曲線を表現しなくてはならないことが多々あります。そうした建造物を造るには、特殊な形状をした型枠が必要になります。合板と桟木で作る一般的な型枠で対応できる場合もありますが、要求される仕上がりや精度・質感によっては、FRP型枠を使う事もあります。

FRP型枠とは、合板の上に繊維強化プラスチック(FRP)をコーティングしたもので、複雑な形状に対応できるだけでなく施工の難しい接合部分も滑らかできれいに仕上げることが出来ます。



以上、型枠大工の工事の流れをご紹介させていただきました。今回の記事を読むまで、なんとなくでしか型枠大工を知らなかった方も多いのではないでしょうか。少しでも多くの方がこの記事を通して型枠について知っていただけたら嬉しいです!!!



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